不穏な事件も多い昨今、とくに小さなお子さんや高齢者がいるご家庭は、気が気ではないでしょう。憧れのマイホームに、家族で安心して住み続けるためには防犯対策が欠かせません。
今回の記事では「一戸建てこそ泥棒に入られやすい」という事実を紹介します。被害の実情を正しく踏まえてから、早速取り入れられる防犯対策を解説しています。
コストをかけずに手軽にできる対策から、本格的な防犯対策までさまざまな手法を紹介していますので、ご自宅に合いそうなものから取り入れてみてください。
一戸建ては空き巣・強盗に狙われやすい!防犯対策がマスト
警視庁の集計によると、侵入窃盗(空き巣など)でもっとも多いのは「一戸建て住宅」であるとわかっています。
※ 引用:データで見る侵入犯罪の脅威|警視庁「住まいる防犯110番」
令和3年、全国で住宅への侵入窃盗は17,283件起きています。
もう一つ不安な侵入強盗の発生場所は、商店が最多です。
※ 引用:データで見る侵入犯罪の脅威|警視庁「住まいる防犯110番」
同じく令和3年、侵入強盗は全国で107件発生しました。
空き巣も強盗もどちらも遭いたくない被害です。しかし発生件数や場所の割合から見ると、より遭う確率が高いのは「侵入窃盗(空き巣)」だとわかります。
家の防犯対策は、空き巣対策を最優先に進めましょう。
なぜ一戸建ては侵入被害に遭いやすいのか
一戸建てが侵入被害に遭いやすいのは、戸建てならではの住宅構造に起因します。
4つの観点から、一戸建て住宅が空き巣に狙われやすい理由を解説します
理由① 道路から家までの距離が近いから
多くの一戸建て住宅は、敷地が道路に面しています。都市部や住宅密集地では道路からほんの数歩で玄関にたどり着けるケースも多く見られます。
マンションなら敷地内に入っても家の玄関まで距離を歩かないといけない上に、オートロックがついていればさらに玄関への到達が難しくなります。
一戸建ては「道路から家まで簡単に到達できる」点で、空き巣に狙われやすいのです。
また一戸建ては町内会の連絡や訪問販売など、他人が敷地内に入ることも珍しくありません。住人以外が敷地に入ったときの不自然さが少ない点も、空き巣が一戸建てを好む要因です。
頭金として600万円を準備できれば、住宅ローンの借入金額は2,400万円です。3,000万円をフルローンで組んだ場合と、支払額を比較します。
理由② 家の中に侵入する経路が複数あるから
マンションや集合住宅は、基本的に「玄関」「ベランダへの掃き出し窓」の2か所しか侵入経路がありません。
玄関は同フロアの住人から・掃き出し窓は外部からの目が届きやすいため、空き巣も侵入をあきらめることがあります。
しかし一戸建て住宅には、マンションと比べて多くの入り口があります。
- 玄関
- リビングからの掃き出し窓
- 風呂場やトイレの窓
- 寝室・子ども部屋の窓
- 勝手口
- 屋上
一戸建ては、空き巣が侵入を試せる経路がたくさんあるのです。
また窓の多さは、室内を覗く場所の多さでもあります。窓が多い一戸建ては、住人の在宅状況や貴重品が置いてありそうな場所を見られやすくしてしまいます。
理由③ 隠れ場所が多く、見つかりにくいから
近隣からの視線を遮るために設置した目隠しフェンスが、かえって空き巣に隠れ場所を提供してしまう場合があります。目隠しフェンスに囲まれた敷地は、いったん入ると外から発見しにくくなるためです。
また植栽や物置、ウッドデッキの下など、一戸建てには隠れ場所が数多くあります。
隠れ場所の多さは、空き巣に「見つかりにくい」という安心材料を与えてしまいます。
理由④ 戸締まりが甘いケースが多いから
警視庁の集計によると、令和3年に起きた侵入窃盗事件のうち半数以上は「無締り」、つまり戸締まりの甘さに起因するとわかっています。
※ 引用:手口で見る侵入犯罪の脅威|警視庁「住まいる防犯110番」
一戸建ては集合住宅より鍵をかけるべき箇所が多く、ついうっかり施錠を忘れてしまう場合もあるでしょう。
また「治安が良い場所だし、大丈夫だろう」と油断して施錠しないまま出掛けてしまう人もいるかもしれません。
あるいは「在宅しているから、大丈夫だろう」と玄関を開けっ放しにしているケースも見られます。
習慣や油断から無施錠の入り口が多いことも、一戸建て住宅が空き巣に狙われやすい理由です。
無締りの次に多い侵入手口「ガラス破り」とは、文字通りガラスを破壊して入る方法です。
「ガラスを破る」という表現から、ガシャーンと大きな音が出ると思いますか?実際は鍵の脇に小さな穴をそっと開け、手を挿し込んでガラス窓を開ける手口が一般的です。大きな音もしないため、在宅していても気付かない場合も多いそうです。
侵入者は、常に「もっとも簡単に入り込める場所と方法」を探しています。そもそも侵入者に嫌がられる家にすることで、防犯対策の効果を高められます。
次の章では、侵入者が嫌がる一戸建ての共通点を解説します。
侵入者が嫌がる一戸建てには共通点がある
同じ一戸建ての家でも、侵入者に狙われにくい家・侵入者が嫌う家には特徴があります。
侵入者が嫌がる一戸建ての共通点を、4つ見ていきましょう。
侵入に時間がかかる
住宅への侵入に時間がかかるほど、見つかる可能性は高まります。空き巣は基本的に「侵入に5分以上かかる家」はターゲットにしないといわれます。
以下のように侵入に時間がかかると思わせる家は、空き巣被害に遭いにくいでしょう。
- 登りにくい素材の外壁が敷地を取り囲んでいる
- 門扉に鍵がついている
- 門扉が高く、外から手を入れても鍵に届かない
- 玄関や窓に2つ以上の鍵がついている
- 1階の窓には面格子がついている
- 2階に登る足場となるものがない
移動すると音や光が出る
空き巣は、自分の存在を周囲に知られるのを嫌がります。とくに「音」「光」は効果的です。
家の周囲に砂利が敷きつめられていると、歩く度に音がします。また人の移動に反応し光がつくタイプのライトは、夜間でも人の周囲を明るく照らします。
いずれも「人がそこにいる」と周囲に知らせる効果があるため、空き巣は砂利やセンサーライトがある家を嫌がる傾向があります。
周囲からの見通しが良い
家の周囲に遮蔽物がなく、道路や近隣からよく見える家も空き巣は嫌がります。どこから見られているかわからず、目撃される可能性があるためです。
犯行後に目撃者が証言すれば、つかまるリスクも高まります。
同じ理由で、地域に住む人がよく通る場所にある家も空き巣は敬遠します。近所の人同士はお互いが顔見知りなため、見慣れない人がいると目立ちやすいためです。
セキュリティシステムがついている
セキュリティシステムがついている家は、システムの存在そのものの効果に加えて「防犯意識の高い家」と空き巣に認識させる効果があります。
外から見えやすい場所にセキュリティ会社のステッカーが貼ってあったり、防犯カメラが設置されていたりすると、空き巣はそれを見ただけで避けるようになります。
【侵入経路順】一戸建ての防犯対策、まずはここから
空き巣被害のリスクを軽減するためには、空き巣が家に侵入する経路をなくすことが大切です。外から敷地、玄関へと空き巣が移動する経路を順に追いながら、一戸建て住宅で取り入れたい防犯対策を解説します。
【オープン外構】道路・近所からの目が届きやすくる
オープン外構とは、隣家や敷地の境界に門扉・フェンスなどを設けず開放的なつくりにした外構です。外からの視線を遮るものがないため、「人の侵入を確認しやすい」「侵入者に隠れる場所を与えない」点がメリットです。
防犯対策の観点からは、一戸建ての外構はオープンにするのがおすすめです。
反対にフェンスなどで近隣からの視線を遮るつくりにした外構を、クローズ外構といいます。庭やリビング内部を見られる心配がなく、プライバシーを確保しやすい点がメリットですが、同時に空き巣を敷地外から見つかりにくくしてしまいます。
ある程度の目隠し効果は維持しつつ、空き巣の隠れ場所を減らしたい場合はセミクローズド外構を検討しましょう。
セミクローズド外構とは隙間が大きく視線を遮らないフェンスや、フェンスの代わりに植栽での目隠し効果を狙ったスタイルです。
【門扉】足がかり・高さ・鍵で入りにくくする
門扉を設置する場合は、次の3点に注意しましょう。
- 足を掛けられる場所がないタイプを選ぶ
- 簡単には登れない高さにする
- 内側に鍵を設置する
- 上から手を入れても届かない位置に鍵をかける
横スリットの門扉は、空き巣に足をかける隙を与えてしまいます。スリットは縦、さらに目の細かいタイプを選びましょう。
また鍵の位置にも注意してください。せっかく鍵を設置しても、外から手が届いては意味をなしません。住人の帰宅時には不便かもしれませんが、外からは開けられない高さにつけることも防犯面では大切です。
【家の周囲に砂利】人の移動を音で知らせる
家をぐるりと取り囲むように、砂利を敷き詰めるのもおすすめです。人が歩くと音を立てるため、自分の存在に気付かれたくない空き巣への忌避効果があります。
敷き詰める砂利は外構用として一般的な粉砕砂利や玉砂利で構いません。
防犯効果を高めるためには、ガラスやレンガでつくられた防犯砂利がおすすめです。一般の砂利より大きな音を立ててくれます。
【人感センサーライト】敷地内への侵入者を光でキャッチ
闇に紛れて敷地に入ってしまった空き巣は、人感センサーライトでキャッチしましょう。人の動きに反応して明かりがつくセンサーライトは、そこに人がいることを周囲に知らせる効果があります。
住人や近所の人の目に留まるケースも多く、見つかりたくない空き巣はすぐに退散する可能性が高まります。
センサーライトはホームセンターやネットショップで、数千円程度で購入できます。ソーラータイプを選べばランニングコストもかかりません。
【サムターンカバー】サムターン回しによる侵入を防ぐ
サムターン回しとは特殊な器具を使ってドア内側のつまみを回し、鍵を開けてしまう手口です。玄関ドアの外側からドリルで穴を開けてサムターンを回すため、施錠していても被害に遭ってしまいます。
サムターン回しを防ぐためには、サムターンにカバーをつけるのがおすすめです。サムターンの上から貼るだけで、簡単に取り付けられます。1個数百円~2,000円程度で購入できるため、玄関ドアがサムターン式の家はぜひ取り付けを検討してみてください。
【補助錠】鍵開けに時間がかかりあきらめる可能性大
補助錠とは、玄関や窓に標準でつけられている鍵のほかに追加でつける鍵をいいます。ピッキングやサムターン回し、ガラス破りなどの手口でメインの鍵が開けられても、補助錠があれば玄関ドアや窓は開きません。
補助錠がついた入り口は侵入に時間がかかるため、狙われにくくなります。
鍵付きの補助錠を、上下2箇所にとりつけるとさらに防犯性が高まります。
【面格子】窓を破っての侵入を防ぐ
面格子は窓の外側から取り付ける金属製の格子です。スリットの入り方によって「縦格子」「クロス格子」「横格子」があります。
窓からの侵入を防ぐ目的があるため、簡単には切断・破壊できない強い素材でできています。寝室やキッチン、子ども部屋など、家の裏側にあり死角に配置されやすい窓にとりつけます。
こちらもおすすめ!気軽に導入できる防犯対策グッズ
高価なコストはかからないのに、高い防犯効果が期待できるグッズをさらに3つ紹介します。気になったものは、ぜひ試してみてください。
防犯フィルム
防犯フィルムは、窓ガラスに貼って「窓を割れにくくする」などの防犯効果を生むアイテムです。
窓ガラスそのものを防犯仕様にしなくても良い点や、自分でも施工でき、気軽に取り入れられる防犯対策です。
◎ 防犯フィルムのメリット
- 窓ガラスそのものを変える必要がなく、コストが安い
- 災害などでガラスが割れても、飛散を防いでくれる
- 大きな音が出るほどの力を入れないと割れないため、万一割られても音で気付ける
- 目隠し効果やUVカット効果が得られるタイプもある
ダミーカメラ
ダミーカメラとは、録画機能などがついていない監視カメラです。見た目は本物にそっくりなため、「監視カメラがある家」と認知させ侵入抑止につながるといわれています。
ダミーカメラが普及してきた理由には、本物の監視カメラはイニシャルコストがかかる点が挙げられます。監視カメラはカメラ本体や配線工事、録画機器の設置などが必要なため、初期費用として1台10万円前後が必要です。
一戸建ては玄関と勝手口、庭先…と複数個所に設置する必要があるため、コストの面から導入をためらう人も多いそうです。
そこで注目を集めているのが、見た目だけは本物そっくりのダミーカメラです。ダミーカメラなら本体を購入し取り付けるだけで済むため、1台あたりのコストが数千円で済みます。
ただし空き巣もつねに最新情報を研究しています。「ダミーカメラ」の存在が認知されはじめており、見破られるケースも増えています。
カメラを導入する際はメリット・デメリットとコスト面をしっかり比較し、検討しましょう。
カメラ・録画機能付きのインターホン
空き巣は侵入する家を決める際に下調べをします。その際住人の在宅状況を探るため、あえてインターホンを鳴らす場合もあるそうです。
しかし一方で、空き巣は証拠を残したくありません。
「インターホンを鳴らした際に在宅する住人に顔を見られるリスクがある」「留守中でも録画されるリスクがある」録画機能付きのインターホンは、空き巣の侵入を抑制します。
インターホンの工事は、電気配線工事が不要(すでに配線済み)なら自分でもDIYできます。もし電気配線工事が必要な場合は、プロに依頼しましょう。
普段から防犯を意識した行動を!泥棒が嫌う家にする秘訣
一戸建ての防犯対策は、日頃からのちょっとした行動でも効果を高められます。空き巣や強盗、泥棒に狙われにくい家にする秘訣を5つ解説します。
玄関先や庭先は常に整理整頓しておく
玄関や庭先など、外から目につく場所はつねに片づけておきましょう。
物が多いと「管理が行き届いていない家」と思われ、狙われやすくなります。泥棒が侵入した形跡があっても、気付けないかもしれません。
また物は死角をつくり、泥棒に隠れ場所を与えてしまいます。
近所と声をかけあい、良い人間関係を築いておく
近隣の住人とは挨拶や雑談を交わし、良い人間関係を築いておきましょう。
住んでいる人同士が顔を分かっていると、見慣れない人(不審者)の存在に気付きやすくなります。万一犯行があっても、目撃者として情報を提供してくれるかもしれません。
近隣からの視線は何よりの防犯対策です。日頃から声をかけあい、地域全体で防犯意識を高めることも大切です。
外出時はもちろん、在宅時も施錠する
「常に施錠」を心がけましょう。外出時はもちろん、在宅していても開けっ放しは厳禁です。
実際、1階に侵入されたが2階で作業をしていた住人は物音に気付かなかったケースもあります。逆も然り、玄関が近い1階のリビングで過ごしているあいだに、風通しのために開けっ放しにしていた寝室から侵入されたというケースもあったそうです。
空き巣はいつ、どこから入るかわからないと心得、在宅していてもすべての部屋を施錠するよう心がけましょう。
換気のために窓を開けたい場合は、窓を開けている部屋にいるようにする工夫も大切です。
家の外に踏み台になるものを置かない
コンテナや段ボール、薪、室外機、給湯器など、泥棒は踏み台になりそうなものなら何でも利用します。
足をかけられるもの、上に乗れるものは、できるだけ家の外に置かないようにしましょう。
室外機などどうしても家と接触するものは、届く範囲に窓がない場所に設置します。
新聞や郵便物をポストに溜めない
ポストに溜まった郵便物や新聞は「留守です」と空き巣に教えているようなものです。こまめに片付け、ポストはつねにキレイな状態を保ちましょう。
不在が長期に渡る予定がわかっている場合は、配達店に配達を止める依頼をしておくと安心です。
まとめ
一戸建ては侵入経路が多く、空き巣に狙われやすい特徴があります。しかし、防犯対策をきちんとしておけば、かなりの確率で被害を防げます。
いまいちど、泥棒の気持ちになって自宅を点検してみましょう。
- 隠れられる場所はないか
- 足をかけられる場所はないか
- 簡単に入れそうな場所はないか
この3つの視点でチェックするだけでも、いますぐ対策すべき箇所が見つかります。
また空き巣被害の原因でもっとも多いのは、戸締まりの甘さです。外出時はすべての窓の施錠を確認し、また在宅時も油断せず鍵をかけておくようにしましょう。