コンパクトでシンプルな暮らしのイメージから、平屋の人気が高まっています。シニアになっても暮らしやすい点も支持され、新築で敢えて平屋を設計するケースも多くなってきました。
ただ、平屋について調べるうちに、音問題が心配になった人もいるのではないでしょうか。
「平屋はうるさい」と表現するSNS投稿もあるほどです。
今回は平屋が気になりつつも、音問題が気になって決心できずにいる人のために、平屋の音問題が起きる原因を解説します。また平屋の音問題を解消する方法や、それでも平屋を選びたいメリットもまとめました。
「一生に一度」と思い切って建てた家を、本当に一生の家にできる平屋を建てるヒントとして、ご活用ください。
「平屋は音が伝わりやすい」は本当!
「平屋は音が伝わりやすい」「平屋はうるさい」という噂、実は本当です。
SNSでも、平屋の音問題に関する投稿を見つけられます。
なぜ、平屋は音が伝わりやすいのでしょうか。平屋の音問題の原因を解説します。
住宅で発生する音は3種類
私たちが暮らす家には、「空気音・固体音・混合音」と呼ばれる3種類の音があります。
空気音 | 空気を介して伝わる音。空気伝播音。 |
固体音 | 固体(物質)の振動によって伝わる音。固体伝播音。 |
混合音 | 空気音と固体音が混ざった音。 |
空気を介して伝わる空気音の例は、人の話し声や動物の鳴き声、防災無線、緊急車両のサイレンなどがあります。音の大きさは、発生源との距離に反比例します。音源に近いほど音を大きく感じるのが特徴です。
一方、固体音は物体の振動によって伝わる音です。足音やドアの開閉音、排水管の水流音などが該当します。振動によって伝わるため、壁やドアを隔てていても聞こえます。住宅密集地では隣家の振動が音となって伝わる場合もあります。
混合音は、空気音と固体音が混ざっています。振動と音を同時に感じ、気になりやすい厄介な音です。洗濯機の音をイメージするとわかりやすいでしょう。洗濯機の運転音と、振動を同時に感じるはずです。工事現場の音や大型トラックの走行音も、混合音に該当します。
人の耳は水平方向の音に敏感
上記で紹介した3種類の音は、住宅が平屋か2階建てかにかかわらず発生します。ではなぜ、平屋の方が音問題を指摘されるケースが多いのでしょうか。
その理由は、人の耳の形状にあります。
人は、左右それぞれについた耳で音をキャッチし、音量や聞こえた時間の微妙な差で音の性質や音源までの距離を認識しています。
そして耳は左右水平についています。したがって、垂直方向の音よりも水平方向の音に対して鋭い感知力を持っているのです。
上下の音より、左右から聞こえる音のほうが敏感に感じ取れるということです。
平屋は2階建てに比べて、より多くの音が水平方向に発生します。そのために平屋は音が問題になりやすいのです。
平屋で気になりやすい音は
では平屋では、具体的にどのような音が気になりやすいのでしょうか。調査の結果、総じて平屋では生活音を中心とした、次の音が気になる人が多いようです。
- 人の話し声
- 子どもの泣き声
- ペットの鳴き声
- 足音(子どもが走り回る音は特に)
- 椅子を引く音
- 排水管の水流音(トイレ、風呂など)
- 食洗器の音
- 風雨の音
家の間取りを工夫すれば、音が気になる程度を減らせます。ただし固体音は床や壁を伝って人に届きます。遮蔽物を設置しても気になるという声もありました。
平屋で音が伝わりやすい原因3つ
平屋で音が伝わりやすい原因は、3つあります。それぞれを詳しく見ていきましょう。
LDKと居室が隣接しているため
平屋は、ワンフロアにすべての部屋を設置します。家族が集まり生活の中心となるLDK(リビング・ダイニング・キッチン)や水回りと各居室が近く、家のどこにいても音が伝わりやすくなります。
人は水平方向の音の方がキャッチしやすい、と前述しました。すべての生活音がワンフロアで発生する平屋は、構造上、より人の耳に音がとどきやすいのです。
2階建ての家は一般的に、1階にLDKや水回りを配置し、2階に寝室や子供部屋を持ってきます。生活音が多く発生するLDK・水回りと寝室が垂直に離れており、平屋ほどは音が気になりません。
すべての部屋が道路に近いため
緊急車両のサイレンや工事の音、車の走行音など、家の外部で発生する音が気になる原因は、平屋のすべての居室が地面に接している点にあります。
エアコンの室外機やエコキュート、給湯器などの音が気になるケースもあります。
外部からの固体音が家のどこにいても伝わりやすいため、初めて平屋に住む人は慣れるまで時間がかかるケースもあるようです。
在宅ワークやリモートワークなど、自宅で集中して作業したい人は、あらかじめ防音対策を施すことをおすすめします。
すべての部屋が屋根に近いため
「平屋は雨音・風の音が気になる」という人もいます。屋根と1階部分のあいだに部屋がなく、屋根に当たる雨音や風の音が直接伝わりやすいためです。
開放感を求めて小屋裏を設置せず吹き抜けにしたり、スキップフロアを設けたりすると、天井と居室とのあいだに防音空間がなくなるため、より音を感じやすくなります。
また屋根の材質によっても、音の大小が変わります。近年人気を集めているガルバリウム鋼板の屋根は、音を大きく感じやすいようです。
生活音の問題を回避する平屋のアイデア
これから平屋を建てる人は、間取りや素材選びを工夫すると音が気にならなくなるかもしれません。人が生活する以上かならず発生する、生活音を回避するアイデアを紹介します。
リビングと居室のあいだ・部屋同士のあいだに空間をつくる
空間は音を伝えにくくするクッションの役割を果たします。もっとも生活音が発生するリビングと寝室のあいだ、また居室と居室のあいだに空間を設けると、生活音の伝播を軽減できます。
廊下、あるいは収納スペースを設けて、防音効果を高めてはいかがでしょうか。パントリーやクローゼットが音の緩衝空間となってくれます。
扉は引き戸より開き戸がおすすめ
一般的に住宅で採用されることが多い扉は、引き戸と開き戸です。引き戸は横にスライドさせて開閉するドア、開き戸は蝶番(ちょうつがい)を使って前後に開閉する扉です。
開き戸は扉が開くスペースを前後に確保する必要があり、扉の前後がデッドスペースになります。一方で引き戸は開けっ放しにしても邪魔にならず、デッドスペースが少なくて済みます。
空間の有効活用と開放感確保を狙い、平屋では引き戸を採用するケースも良く見られます。
ただし、注意したいのは気密性です。引き戸は扉周囲の隙間が多く、気密性では開き戸に劣ります。気密性が低いと隙間から音が漏れやすくなります。
平屋の音問題を回避したい場合、できるだけ開き戸を採用したほうが良いでしょう。
防音性能の高い緩衝材や断熱材を採用する
壁の内部に入れる緩衝材や断熱材を、防音効果の高いものにする方法もあります。
断熱材にはさまざまな種類があります。上手に選ぶと防音性能だけでなく、断熱性能の向上も見込めます。
ただし施工会社によって、施工可能な断熱材の種類が限られる場合があります。断熱材や緩衝材による防音性能アップを希望する場合は、事前に施工会社に相談しておきましょう。
外部からの音問題を回避する平屋のアイデア
外部からの音を聞こえにくくする平屋のアイデアを紹介します。
住宅全体の気密性を高める
外からの音を聞こえにくくする最適な方法は、住宅の気密性をできるだけ高めることです。
気密性は「空気が家にどの程度出入りするか」を示す指標で、高いほど空気が出入りしません。空気が出入りしないとは、住宅の隙間が少ないことを意味するため、外部の音も室内に入りにくくなります。
実際、気密性が高い家に住むと「家の中がこんなに静かだとは!」と驚くこともあるそうです。
気密性は「C値」で示されます。高気密といわれる住宅は「C値=1.0cm2/m2以下」が一つの基準とされています。
中庭を設ける
中庭を設けると、部屋と部屋のあいだに緩衝空間が生まれます。部屋同士の距離を物理的に離せ、防音に一定の効果が期待できます。
中庭に面したリビングを家の中心に配置し、両側に寝室と子ども部屋を分散させるコの字型の間取りなら、家族それぞれのプライバシーも守りやすくなります。
中庭があると、休日のBBQや子どものプール遊びも手軽にできます。生活の質をワンランク上下たい人に、おすすめの間取りです。
寝室や子供部屋は、道路の反対側に配置する
地面を伝わる音が気になりそうな土地に平屋を建てるなら、寝室や子供部屋は、道路の反対側に配置した間取りを検討してみましょう。
とくに静かに過ごしたい夜間は、道路と寝室のあいだにあるリビングが緩衝空間となってくれます。交通量の多い道路に面した平屋におすすめのアイデアです。
屋根からの音問題を回避する平屋のアイデア
屋根からの音問題を回避する平屋のアイデアを紹介します。
音が伝わりにくい屋根材を選ぶ
屋根からの音問題を回避するには、音が伝わりにく屋根素材を選びましょう。
もっとも音が伝わりにくい屋根材は、瓦です。粘土瓦や陶器瓦、セメント瓦は、雨音をほとんど室内に伝えません。
ただし、瓦は重量があります。建物はできるだけ軽いほうが耐震性能が上がることもあり、近年は軽量な屋根材を選択するケースが多く見られます。
音問題と軽量化の課題を同時に解決できるのが、スレート屋根です。軽量ながら比較的厚みがあり、素材を重ね合わせて施行するため、防音性能に優れています。
人気が出ているガルバリウム鋼板をはじめとする金属系の屋根材は、コストは低いものの遮音性能には劣ります。
天井を高くする
どの居室も屋根が真上にある平屋は、屋根を高くすると防音効果が期待できます。天井をできるだけ高くした間取りを検討してみましょう。
一般的な住宅の天井は、2,400mm(2.4m)が標準です。ただ2階部分がない平屋は、天井高の自由度がグンと高まります。2,700~3,000mmの天井高を確保できれば、音問題を解消しつつ、開放的な大空間を手に入れられるでしょう。
ロフトやスキップフロア、小屋裏収納をつくると、自然と天井高が上がります。また天井が高いと開放感ある空間が生まれます。
音問題を上回る平屋のメリット
平屋は音問題と無縁ではいられません。しかし、音の問題を上回るメリットもあります。平屋ならではのメリットを4つ、見てみましょう。
生活動線がシンプル
平屋は、生活のなかで上下移動がありません。暮らして見るとわかりますが、これが実に便利です。
- 洗いあがった洗濯物を持って2階ベランダへ
- 夜、ベッドに入ってからのトイレ
- 階段の掃除
- 2階にいる子どもを呼びに行く
2階建ての家だと当然のようにあるこれらの行動が、平屋にはありません。
居室の段差がない間取りにしておけば、家中を丸ごとロボット掃除機に任せることも可能です。
家族の距離が近い
家族の距離を近く保ちたい人にとって、リビングと居室、居室同士の距離が近い平屋はメリットの多い間取りです。
気づけば家族がリビングに集まっている、居室にいる子どもの気配を常に感じられる、こうした距離感は平屋ならでは。小さなお子さんがいる家庭では、家のどこにいても目が届くのも安心ポイントです。
耐震性に優れる
平屋は耐震性能にも優れています。理由は次の3つです。
- 正方形や長方形などのシンプルな形状で作られることが多い
- 建物の高さが低い
- すべての居室が基礎とつながっている
住宅は、凹凸が多い複雑な形状ほど、耐震性能が低くなります。シンプルな構造の平屋は、それだけで耐震性能を高めやすいのです。また建物の高さが低く、基礎と住宅が密着している点も見逃せません。
地震が起きても家が揺れにくく、被害が少なくて済みます。
シニアになってからも安心
平屋のメリット4つ目は、シニアになってからの安心感です。階段がないため、足腰が弱くなるシニアになっても、安心して暮らし続けられます。
2階建ての家でよく見られる「老後は1階で生活、2階は空き部屋か物置化」という現象も防げます。
一生住み続ける前提で、建築設計時点でバリアフリーにしておくと、より暮らしやすい平屋になるでしょう。
鹿児島での平屋づくりなら木のんホームにお任せください
鹿児島県で平屋を建てるなら、木のんホームにお任せください。
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まとめ
平屋は、間取りや構造上、音が問題になりやすいという特徴があります。居室同士の距離を離す、防音性の素材を選ぶことで解決できるケースもあるため、施工会社によく相談してみましょう。
平屋の音問題回避には、土地の形状や立地を踏まえた設計も重要です。通行料やライフスタイルを十分に踏まえ、できる限り音問題を解消できる設計を希望してください。規格にとらわれない自由な設計ができる、建築士設計の住宅がおすすめです。
平屋の家づくりは、アトリエ建築家が「住みやすくて、かっこいい家」をご提案する、鹿児島の木のんホームにぜひご相談ください。