「開放的」「BBQができそう」など、屋上がある家に憧れを抱く方も多いでしょう。屋上は延べ床面積に算入されないため、敷地の容積率にかかわらず設置できる点も魅力です。
一方で、「掃除はどうする?」「お金がかかりそう」といった心配から、屋上づくりに迷っている方も少なくないはずです。
この記事では、戸建住宅に屋上をつくるメリットとデメリット、また設置の注意点、費用の目安などを総合的に解説します。
マイホームに屋上をつけるべきか決める、ヒントとしてください。
一般的な屋上のタイプ2つ
一般的に屋上の作り方は、2つの方法があります。作り方によって屋上へのアクセス方法や費用も変わるため、屋上の形態を知っておくことはとても大切です。
屋上の2つの作り方について、簡単に解説します。
最上部の全面が屋上のタイプ
いわゆる「屋上」とイメージするのは、このタイプかもしれません。「マンションの屋上」「ビルの屋上」のように、最上部の全面を屋上として利用するパターンです。
最上部の全面を屋上にした場合、屋上へのアクセス方法は次の2つとなります。
- 通路がわりのペントハウス(小屋)を設置する
- 屋上に行くための階段をつくる
敷地の高さ制限によっては、ペントハウスや手すりなどの形状に制約がかかる場合があります。
階段を使って屋上に上がる場合は、階段が建物の外側にあるタイプ(外階段)と建物の内側にあるタイプ(内階段)とにわかれます。
屋根の一部分が屋上のタイプ
屋根の一部分を屋上とした場合、隣接する居室から入るのが一般的です。「広いバルコニー」「屋上テラス」をイメージすると理解しやすいでしょう。
隣接する居室をリビングにすると、屋上部分を「アウトドアリビング」「セカンドリビング」として活用できます。
ただし排水・防水対策を十分に施しておかないと、雨水が溜まり、室内に流れ込むおそれがあります。
住宅に屋上をつくるメリット5つ
屋上は、非日常感あふれる空間です。来客が屋上を見たときに発する「すごい!」「素敵!」といった声も、施主の満足度を高めてくれるでしょう。
屋上を設置するメリットを、5つ解説します。
景色を楽しめる
遮るものがなく空や眺望を楽しめる点は、屋上の何よりのメリットです。テーブルとソファを置いて、風を感じながらとるランチは格別!
眺望を楽しめる屋上にするためには、「囲いの高さを低くする」「視界を遮らない素材(フェンスなど)を使う」ことが大切です。ただし、こちらから外が良く見える屋上は、外からも見られやすい点には注意しましょう。
お家でアウトドアが楽しめる
「屋上といえばBBQ!」連想するほど、屋上とアウトドアレジャーの相性は抜群です。BBQのほかにもプールやテント、ハンモックなども楽しめます。
ただしBBQや花火など、屋上での火気取り扱いには注意が必要です。施工されている素材によっては焦げたり、穴が開いて雨漏りにつながったりするおそれがあります。
また掃除やプールのために屋上にも水道を設置する場合は、追加の費用がかかります。
洗濯物や布団を干せる
広い屋上は、大量の洗濯物や布団を干すのにピッタリです。「庭に干すと生活感が出て嫌だ」という方も、屋上なら人目につきにくく、安心して干せるでしょう。
注意したいのは、強風です。遮るもののない屋上は、思いのほか強い風が吹く場合があります。
洗濯物が飛んでしまったり、干していた布団が倒れたりしないように対処しておきましょう。
家庭菜園や屋上緑化ができる
グリーンのある暮らしを楽しめるのも、屋上の魅力です。「プランターで家庭菜園」「緑のカーテン」などは、お子さんも喜んでくれるでしょう。
敷地面積の関係で広い庭が確保できない場合に、屋上を庭代わりにしてガーデニングを楽しむ方法もあります。
多くの植物や土を屋上に配置する際は、積載荷重に注意します。
屋上広場/バルコニーの積載荷重は「1㎡あたり60kgまで」と建築基準法(第八十五条)で定められています。ルールの範囲内で楽しむようにしてください。
子どもやペットの安全な遊び場になる
屋上は交通事故に遭う心配がなく、小さなお子さんやペットの安全な遊び場としても機能します。見守る親御さんのストレスも少なくて済む点もメリットでしょう。
お子さんやペットを屋上で遊ばせたい場合は、以下のような落下防止対策を十分に施しましょう。
- 手すりの高さは床から110センチ以上。120センチ以上が望ましい
- 手すりの周辺に子どもの足場となるものを置かない
- 手すりの下部・隙間は、11センチ以下(できれば9センチ以下)にする
住宅に屋上をつくるデメリット6つ
住宅の屋上設置には費用がかかります。またずっと住む住宅であるだけに、メンテナンスやランニングコストの検討も欠かせません。
「屋上をつくろう!」と決める前に、デメリットも冷静に把握しておきましょう。屋上のデメリットを5つ解説します。
建築費用が上がる
屋上の設置には、追加の費用がかかります。住宅の建設費用に、100万~300万円程度(10~20坪)が加算されるのが一般的です。
屋上には最低限、「防水」「排水」施工が必要です。
防水は、全面に防水シートを敷いて施工します。防水をしておかないと、雨漏りの原因となるためです。また、水を溜めないように排水口も必要です。
落下防止とプライバシーを守る役目を持つ「手すり」の設置費用も見込んでおきましょう。
太陽光パネルの設置が難しくなる
光熱費の節約やエコの観点から、太陽光パネルを設置する住宅が増えています。一般的に戸建住宅の太陽光パネルはもっとも日が当たる屋根の上に置かれます。
しかし住宅の最上部を屋上にすると屋根面積が少なくなるため、太陽光パネルの設置が難しくなります。全面を屋上として使いたい場合は、太陽光パネルの設置はあきらめた方が良さそうです。
また国からの補助金が受けられる省エネ住宅・ZEHは、一定量の発電能力を持つ太陽光パネルの設置が条件となります。屋上は、ZEH仕様との二択になる可能性もあります。
雨水が溜まる場合がある
屋上に排水口を設けても、雨水がたまる懸念が残ります。近年頻発するゲリラ豪雨では、短時間の雨量が屋上の排水能力を超えてしまう場合があるからです。
「排水口を複数設ける」「片勾配にして水が流れやすくする」などの工夫を施し、できるだけ速く水が流れるようにしましょう。
また排水口はゴミが溜まらないよう、こまめに掃除することも大切です。
屋根の形状が制限される
屋上をつくると、必然的に屋根の形状が「陸屋根」になります。陸屋根とは勾配のない平たい屋根を指します。
「三角屋根のかわいいお家にしたい」「片流れ屋根のスタイリッシュな家を建てたい」などの希望は叶わなくなる点は押さえておきましょう。
掃除する場所が増える
外部から落ち葉やゴミも舞い込みやすく、砂や埃が溜まる屋上は、あっという間に汚れてしまいます。屋上を快適に使うためには、定期的な掃除の手間がかかる点もデメリットといえるでしょう。
「屋根にしておけば掃除はいらなかったのに」といった声も見られました。
屋上の掃除はゴミの除去や掃き掃除、タイル掃除などが必要です。排水溝の詰まりがあれば、合わせてきれいにしておきましょう。
思ったよりも使わない
「屋上をつくったは良いものの、あまり使わない」といった声もあります。夏は直射日光が当たり、冬は寒いために、思ったほど使う機会がない人も多いようです。
「洗濯物は乾燥機を使っている」「布団は屋上まで持ち上げるのが大変」などのコメントもSNSで見られました。
費用がかかるものだけに、「何のためにつくるのか」を明確にしておくことが大切です。屋上までの動線や使い勝手も、慎重に見極めましょう。
屋上をつくる際に考えておきたい注意点3つ
屋上を設置する際に注意すべきポイントは、全部で5つあります。安心して遊べる安全な屋上を便利に活用したい方は、ぜひチェックしてみてください。
高さ制限・斜線制限をチェックする
屋上自体は建物の容積率に算入されませんが、作り方や部分によっては高さ制限や斜線制限を受ける場合があります。
屋上にアクセスするためのペントハウスをつくる場合は、「建築面積の8分の1まで」「高さ5m以下」と決められています。また手すりや屋外階段は制約を受けやすいため、かならず工務店やハウスメーカーに確認しましょう。
動線を工夫する
屋上を活用するには、動線を工夫するひと手間が必要です。
たとえば、「屋上で仲間とBBQをしたい」と考えていたのに、2階の寝室を通らないとたどり着けない動線で建設するとどうなるでしょうか。油のついたBBQ道具を持ったまま、あるいは家族以外の人が寝室を通ることになります。
あこがれていた「屋上BBQ」への気持ちが、徐々にしぼんでくるかもしれません。
屋上をつくる場合は、「やりたいこと」を先に決めるのがポイントです。その上で、気軽に実現できる動線を検討しましょう。
周辺環境、近隣にも配慮する
本当に屋上をつくっても問題がないか、周辺の環境も確認しておきましょう。
周囲に屋上より高い建物があると、簡単に屋上を覗かれてしまいます。プライバシーが気になり、屋上も使いにくくなってしまうかもしれません。
また屋上で騒ぐと、近隣住宅の迷惑になる場合もあります。夜間・早朝の使用を考えている場合はとくに、防音効果のある外壁で囲むなどの対策をとりましょう。
屋上を外壁で囲むと、外から見られる懸念はかなり減ります。ただしフェンスで囲むより建築コストはかかります。予算と照らし合わせ、無理のないプランを組んでください。
屋上をつくった人の声
先に屋上をつくった人の中には、「やっぱりつくって良かった!」「屋上はいらなかった」という両極端の声が見られます。
家づくりで後悔しないためにも、経験者の声をしっかりチェックしておきましょう。
屋上をつくって良かった理由
「屋上をつくって良かった」理由には、次のようなものが見られました。
- 来客に「すごい」「いいなあ」と言われるのが嬉しい
- 庭がないが、子どもとプール遊びができる場所になって良かった
- 親は室内にいながら、子どもを安心して遊ばせられる
- 休日に音楽をかけながらコーヒーを飲むと最高!
- テントを張り「おうちキャンプ」が楽しめる
屋上は「家にいながらアウトドア気分」が味わえる点や、ちょっとした遊び場・くつろぎスペースとして利用できる点が魅力だと感じる人が多いようです。
「来客時はかならず屋上でランチにする。リビングが狭くても安心」という声もありました。
屋上をつくって後悔した理由
反対に「屋上をつくって後悔した」「つくらなくてもよかった」という声も見られました。理由は以下のとおりです。
- 平日はほぼ使わない。高いお金を出したのに、もったいない
- 掃除がとにかく面倒!落ち葉の季節はため息が出る
- 夏は暑く、冬は寒い。結局、室内で過ごす方が多い
- 素敵な家具を置きたかったが、雨に濡れたり汚れたりする。結局、楽しみ切れない。
- プールの水を一気に流したら排水溝があふれ、水浸しになった
屋上をつくっても「案外使わない」「いちいち上るのが面倒」といった声が多く見られました。屋上をつくる目的を決めておかないと、なんとなくそこにあるスペースというだけになりやすいようです。
また屋上をつくるには外構並みの費用が掛かります。「あまり使わない屋上よりも、毎日目にする外構にこだわればよかった」といった声もありました。
まとめ
屋上は「あると便利そう」「おしゃれで憧れる」といった理由だけでつくると、後悔につながりやすいようです。何のためにつくりたいのか、目的を明確にしてから工務店に相談しましょう。
また初期費用にくわえて、メンテナンスコストもかかります。一般的な屋上防水の耐用年数は10~20年といわれており、性能を維持するには10年に1回はメンテナンスをするよう推奨されています。メンテナンスコストも十分考慮し、設置するかどうか検討した方が良さそうです。
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