「3回建てないと理想の家はつくれない」とよくいわれます。どんなによく考えて建てたつもりでも、実際に住んでみるとちょっとした不具合や不便はどうしても出てくることからいわれるようです。
またSNSで他の住宅の様子を簡単に見られるようになった現代ならではの後悔もあります。建てたあとにInstagramを見て、「そのアイディアがあったか!」「知っていれば採用したのに!」と感じるケースです。
とはいえ、完璧な住宅を求めて設計に時間をかけすぎると、いつまでたっても家が完成しません。
家づくりの後悔を減らすコツは、「多くの人が後悔しやすいポイントを押さえること」です。「設計」「デザイン」「その他」の3つに分けて、後悔しやすいポイントを見ていきましょう。
<設計編>家づくりで後悔しやすいポイント6つ
一度決めると変更できない設計面は、とくに後悔が起きやすいポイントです。「こんなはずでは…」と感じやすい要注意箇所を、6つ紹介します。
1.「なんとなく」つくった便利そうなスペース
「フリースペース」「多目的スペース」と呼ばれるスペースや、リビングに隣接させた畳スペースを後悔する人もいます。
「あれば便利そう」「来客時に役立ちそう」といった理由でつける人も多いのですが、目的が明確ではないスペースは活用されにくく、デッドスペースになりがちです。日頃の生活動線や来客の頻度を踏まえ、限られた床面積すべてに目的を持たせると後悔が少なくなります。
<後悔ポイント>
- 「フリースペースをつくったが、結局使わなかった」
- 「モノを置くだけの場所になってしまった」
- 「フリースペース分の床面積を居室に割り振ればよかった」
2.「テラスになれば」とつくった広いバルコニー
「晴れた日にBBQをしたい」「プールを出して子どもを遊ばせたい」とつけた広いバルコニーを後悔する人もいます。「掃除が面倒で、結局BBQもプールもしない」となりやすいためです。
あるいはBBQやプールに必須の水栓を2階に作り忘れ、バルコニーを活用しきれない事例も見られました。
直射日光や風雨にさらされるバルコニーは劣化しやすく、使っていないのにメンテナンス代がかかると後悔する人もいるようです。
<後悔ポイント>
- 「意外と掃除が面倒」
- 「洗濯ものを干すからBBQができない」
3.「自然光が入る家に」とつくった多数の窓
「できるだけ明るい家にしたい」と窓をたくさん設けたことを後悔する人もいます。窓はつくれば作るほど家に隙間が生まれて気密性が低下し、寒暖差を感じやすくなるためです。
とくに賛否が分かれるのは、バスルームの窓です。窓があると開放的になる反面、冬場は冷えやすくなります。
また窓の多さと侵入のしやすさは比例します。窓を増やした場合は、防犯対策も十分行うことが大切です。
<後悔ポイント>
- 「たしかに家は明るいが、夏は明るすぎて結局カーテンを閉めている」
- 「バスルームの窓はいらなかった。冬が寒すぎる」
- 「窓が多い=侵入箇所が多いということ。防犯面が心配」
4.「景観が良いから」と2階に置いたリビング
見晴らしが良い2階リビングは、一度はあこがれる人が多い間取りです。立地によっては遮るものなく、借景を楽しむこともできるでしょう。
ただし実生活では不便との声もあります。お米や水などの重い荷物を、毎回2階まで運ぶ必要があるためです。
また2階リビングの住宅では、必然的に個室は1階になります。子どもがリビングを通らず自室に直接行けてしまうのが心配、との声もありました。
<後悔ポイント>
- 「買い物をしてきた重い荷物を運びあげるのが大変」
- 「わざわざ2階に上がらないと家族が集まれないので、あまり顔をあわせなくなった」
5.「とくにこだわりがないから」と考えていたコンセントの位置
コンセントの位置は、後悔が多いポイントです。こだわりがなかったから工務店に任せたが、生活が始まったら使いやすい位置にコンセントがなくて不便を感じるケースが多く見られます。
コンセントの使用頻度が高い「キッチン・リビング・寝室」は、要注意です。普段の生活や使っている家電の配置を考え、必要な箇所にはすべて付けておくと後悔が少なくなります。
<後悔ポイント>
- 「使いたい家電を全部挿せるだけのコンセントがなかった」
- 「たこ足配線にせざるを得ず、見た目が良くない」
- 「スマホの充電用に、ダイニングテーブルの近くにもつくるべきだった」
6.「ミニマムに暮らそう!」と最低限にした収納
「モノをできるだけ持たないシンプルな暮らしに憧れている」、あるいは「収納を減らしてでもリビングを広くしたい、モノはその分減らせばよい」と考えて収納を少なくするのも、後悔しやすいポイントです。
お子さんがいるご家庭はとくに注意してください。学童品や部活用具などが増えるため、想定以上に収納が必要になります。いくら親御さんがミニマリストだとしても、お子さんが学校で使うものは減らせません。
収納スペースは10年後、20年後の暮らしやすさも考えて決めましょう。
<後悔ポイント>
- 「結局モノを減らしきれなくて、リビングにあふれている」
- 「限りある収納に詰め込んだ結果、どこにしまったかわからなくなった」
- 「子どものモノがこんなに増えるとは思わなかった」
<デザイン編>家づくりで後悔しやすいポイント6つ
練りに練って決めたはずのデザインなのに、いざ家が建ってみると後悔のタネに…ということも少なくありません。家づくりのデザイン面で後悔しやすいポイントを6つ紹介します。
1.「おしゃれだから」と濃色にした脱衣所の床
シックで落ち着いた濃色の床は、住宅カタログでもよく見るスタイルです。おしゃれで高級感があるダークカラーは近年人気を集めています。
ただし、リビングと床続きになりやすい洗面所の床は、同じ濃色にして良いか十分検討しましょう。濃色の床は水滴の輪ジミやホコリが目立ちやすいためです。
工務店で床材のサンプルを借り、水やホコリの見え方をチェックしてから決めるのがおすすめです。
<後悔ポイント>
- 「ホコリが目立つから、1日に何度も掃除しないといけない」
- 「床の水を拭き取るために、誰かが使うたびにチェックしないといけない」
2.「かっこいいから」と採用したスケルトン階段
スケルトン階段とは、骨組みと段板のみで作られる階段です。段板をつなぎ合わせる蹴込み板がないため圧迫感がなく、リビング階段でもよく採用されます。
開放感がある反面、「モノが落ちやすい」と後悔する声も見られました。なかには「小さい子が足を滑らせた際に、隙間から落ちそうになった」という怖い事例も。蹴込み板代わりにネットを設置して対策するなど、かえって手間が増えた人もいるようです。
<後悔ポイント>
- 「親戚の小さい子どもが遊びに来た時、階段の隙間から落ちそうになった」
- 「子どもが面白がって、隙間からモノを落とすので床が傷む」
- 「おしゃれだけれど、安全性を考えると普通の階段が良いかも」
3.「明るい家が良い」と採り入れた吹き抜けリビング
吹き抜けのリビングは「やってよかった」「吹き抜けにしなければよかった」との両極端なコメントが拮抗するポイントです。
吹き抜けを後悔した理由には、冷暖房効率に関するものが多く見られました。「夏は直射日光のせいで暑い」「冬はリビングが寒い」といったコメントです。吹き抜けを採用したい場合は、高断熱仕様での建設や全館空調などもあわせて検討しましょう。
<後悔ポイント>
- 「日当たりは良いが、夏は日差しがダイレクトに入るので暑い」
- 「暖かい空気が2階にいってしまい、冬のリビングが寒い」
- 「吹き抜け部分の窓掃除ができなくて困る」
4.「些細な部分だから」とお任せにした巾木・廻り縁
巾木(幅木)とは壁と床の境目に、廻り縁とは天井と壁の境目に取り付ける部材をいいます。天井や床材と壁材との境目にできる隙間を隠す役割を持っています。
巾木や廻り縁は小さなパーツですが、目につきやすい箇所でもあります。工務店にお任せにしたものの、後からInstagramでおしゃれな素材を知って後悔する人も少なくありません。
巾木や廻り縁には、さまざまな色・素材があります。クロスや床材と相性を見て選ぶと、後悔が少なくなります。
<後悔ポイント>
- 「白い家にしたかったのに、巾木だけが木目調で不自然」
- 「シンプルな家にしたくて白い巾木にしたが、汚れが目立って後悔」
- 「上部にたまったホコリが目出つ…」
5.「入居してから気になるようになった」床下点検口の位置
床下点検口は、住宅の床下に入って漏水や建物の傷み、損傷をチェックするための入り口です。どの住宅にも必ずつくられますが、注文住宅の場合はどこにつくるか指定できます。
四角く切られた入り口は目立つため、場所によっては目につきやすく後悔ポイントになります。工務店と相談しながら、納得の位置に置きましょう。
<後悔ポイント>
- 「シンプルなキッチンなだけに、床下点検口ばかりが目立つ」
- 「ランドリールームの中央に点検口があり、毎日目につく」
6.「接続機器の場所を考えて配線すればよかった」LANコンセントの位置
盲点なのが、インターネットに接続するLANコンセントの位置です。
LANコンセントにルーターを繋ぎWi-Fiで電波を飛ばすのが一般的ですが、家の構造や壁の厚みによっては、電波が届きにくい部屋ができてしまうこともあります。
インターネットをよく使う場所に確実に電波が届く位置にコンセントを置けるよう、設計段階で十分検討しましょう。
<後悔ポイント>
- 「階段と壁のせいで、2階の寝室に電波が届きにくい」
- 「高性能なルーターに変えても、イマイチ改善されない」
- 「モデムやルーターを隠したくて収納内部にコンセントを配置したが、外に出せばよかった」
<その他>家づくりで後悔しやすいポイント4つ
設計やデザイン面以外でも、家づくりの後悔につながりやすいポイントがあります。SNSやインターネットの口コミでよく見られる後悔ポイントを4つ解説します。
予算・費用
「費用が想定以上にかかってしまった」という後悔の原因は、大きく2つに分けられます。
1つはグレードの高い設備を選んだり、オプションを数多く追加したことによる予算アップです。高品質・高機能製品は素敵に見えるため、ついあれもこれもと追加すると予算をオーバーしてしまいます。
もう1つは購入を検討しているうちに土地や資材の価格が高騰し、予算をオーバーしてしまうタイプです。また市場情勢が変化し、住宅ローンの金利が変わって予算をオーバーするケースもあります。
<後悔ポイント>
- 「もっと良い場所はないかと探すうちに、坪単価が上がっていた」
- 「見積もり検討中に国際情勢が変わり、資材価格が高くなった」
- 「住宅ローンを組む金融機関を選んでいる間に、金利が上がってしまった」
工務店選び
工務店やハウスメーカー選びで後悔する人もいます。地方都市で多いのが、「地域や親戚のつながり・昔からお世話になっている工務店などに頼まざるを得なかった」「ほかに選択肢が無かった」という後悔です。
工務店によって得意不得意や対応可能な範囲、工法も異なります。最新の省エネ基準に適合した住宅やZEH(net Zero Energy House、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス:一次エネルギー消費が実質ゼロの省エネ住宅)を建てたかったが、工務店が対応しておらず断念せざるを得なかったというケースもありました。
<後悔ポイント>
- 「義両親からの資金援助があり、実家が馴染みの工務店以外を選べる雰囲気ではなかった」
- 「契約した工務店と、施工を担当する業者とが異なり意思疎通がうまくいかなかった」
- 「現場で勝手に決めてしまう担当がおり、希望通りに作ってもらうのが大変だった」
土地選び
周辺環境や騒音、隣人の人柄など実際に住んでみないとわからないことが多いため、土地選びは後悔が多いポイントです。日当たりや形状、土地条件、用途地域、上下水道の開通状況などは事前のチェックで把握できるため、入念に確認しましょう。
ゴミ捨て場や町内会の状況など把握しづらい項目は、不動産会社に積極的に質問してみてください。地盤調査の結果も要チェックです。
また土地探しに100点はないと言われます。どれだけ探しても「もっと条件の良い土地」が売り出される可能性は否めません。
<後悔ポイント>
- 「間口が狭くて車の出し入れがしにくい」
- 「土地価格は安かったが、家を建てられる状態にするまでにお金がかかった」
- 「土地を決めた後に、もっと理想に合う土地が売り出された」
設備・仕様選び
ある面では便利で素敵な設備・仕様も、別の面から見ると不便・後悔になる場合もあります。
無垢材はナチュラルな雰囲気が魅力ですが、水回りに採用するとシミ・汚れが取れにくくなります。トップライト(天窓)は家が明るくなりますが、紫外線が気になるという人もいます。夫と妻では、必要と感じる設備や仕様も異なります。
設備や仕様は「なんとなく良さそうだから」と決めるのではなく、一つひとつメリットとデメリットを比較検討するひと手間が後悔を防ぎます。
<後悔ポイント>
- 「勧められるままに設備を入れたが、結局使いきれない」
- 「床下収納をつければよかった。後から付けられるタイプではないと知り、後悔」
- 「デザイン重視でキッチンを決めたが、高さが合わず使いにくい」
家づくりで後悔しないためにできること
設計が決まる前に納得いくまで検討し納得してから着工すると、家づくりの後悔を最小に抑えられます。一生に何度もある機会ではない家づくりで後悔しないために押さえておきたいポイントを5つ、解説します。
1. 予算は無理なく払える範囲で設定する
「ちょっと頑張れば払えるかな」「共働きすればもうちょっと出せるかな」など、希望的観測で予算を上積みするのはやめましょう。
収入やライフプランは、現状がずっと続くとは限りません。予算は必ず「無理なく払い続けられる金額」に抑えます。その予算内で理想に近い住宅を建ててくれる工務店を探しましょう。
住宅ローンの返済比率(年収に占める返済額の割合)は25~30%程度が理想と言われます。年収500万円なら、125万~150万円程度です。予算を決める一つの参考にしてください。
2. 希望をよく聞いてくれる工務店を探す
工務店、もっと言えば担当者との相性は家づくりにおいてとても重要です。どんな相談でも気軽に持ち掛けられる、顧客目線を持った工務店・担当者を探しましょう。
「契約した途端にレスポンスが遅くなる」「契約したら話をよく聞いてくれなくなった」などのケースは、残念ながら実際にあります。担当者とのやりとりに不信感やしこりが残ると、毎月住宅ローンを返済するたびに嫌な気持ちになりかねません。
もし担当者が合わないと感じたら変えてもらう、場合によっては別の工務店に依頼するなどしましょう。納得して家づくりをするために、かならず必要なプロセスです。
3. 土地は「30年後」まで考えて選ぶ
土地は現在のライフスタイルだけではなく、自分たちがシニアになった後の利便性も考えて決めましょう。お子さんが通学しやすいことはもちろん、日々の買い物や通院にも便利な立地であることが大切です。
また広すぎる土地は、老後になってからの手入れや売却に苦労する場合があります。現在から30年後までを見通し、ずっと暮らしやすいと感じられる土地を見つけてください。
4. 最新の家づくり情報を収集する
家づくりのトレンドは、つねに変化しています。より暮らしやすい工法や設備が開発されたり、住宅建築に関する法律が改定されたりもします。
家を建てる際は、最新情報を積極的に収集しましょう。
工務店に相談に行くと、補助金などのお得情報を教えてもらえる場合もあります。家づくりを検討中の方も、勉強会などに参加してみてください。
5. 譲れない希望ははっきり伝える
家は、一生でもっとも高額な買い物です。家づくりで後悔しないために、譲れない希望ははっきりと担当者に伝えましょう。
いうべきことを言わずに希望の家が建たず、後悔してもどうにもなりません。「こんなことを言ったら図々しいと思われるかな」「ここは察してくれるかな」などと考えず、遠慮なく伝えるのがコツです。
担当者も希望を伝えてもらえれば、施主の理想を理解しやすくなります。お互いが「理想と現実」を伝えあい、納得できる家を完成させましょう。
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まとめ
家づくりの後悔を少なくするコツは、逆説的ですが「後悔はどうしてもあるもの」と割り切ることです。「家は3回建てないと満足できるものにならない」という言葉からもわかるように、住み始めると「やっぱりこうすればよかったかな」と感じる点は出てきてしまいます。
だからこそ記事を参考に、多くの人が後悔しやすいポイントを理解し、回避する家を建てられるよう工夫しましょう。建築士や工務店のアドバイスも積極的に取り入れてみてください。